バルチック海運指数(BDI)と日本の代表的な海運銘柄の相関性と今後の見通し
現在は2021年5月20日(木)です。本記事では、「バルチック海運指数(BDI)」と日本の代表的な海運銘柄の株価の相関性や今後の見通しについて考察します。
※本記事はあくまで筆者の個人的な認識・感想を文字におこしただけのものであり、読者への助言や売買の推奨を意図するものではありません。特定の情報ソースを鵜呑みにして思考停止で金融商品を売買しないでください。投資判断は全て自己責任でお願いします。
「バルチック海運指数」とは?
ここ最近、Twitter等で「バルチック海運指数」というワードを耳にするようになったと思います。2021年3月23日に正栄汽船が所有する大型コンテナ船「エバーギブン」がスエズ運河に座礁する事件が発生してから、日本の海運銘柄の株価が力強い上昇を見せたことで、一時期話題になりました。下記のスクリーンショットは世界の株価の「業種別株価指数」ページからの引用です。4月20日から5月20日にかけて、海運セクターは他の銘柄と比較して株価が上昇した日がより多く、またより高い上昇率を記録していることが分かります。
この海運セクターの躍進を受けて、SNSで個人投資家たちが大いに盛り上がりました。投資家YouTuberでZeppy代表の井村俊哉さん(@imuvill)は「海運投資家」を自称し、自らのハンドルネームを「井村俊哉 | 大航海時代」に変えるほどでした。この飛躍的な株価上昇を記録した海運セクターの各銘柄の株価と非常に高い相関性をもって連動していると言われたのが、この「バルチック海運指数」です。
ロンドンにある「バルチック海運取引所(Baltic Exchange)」が算出・公表している外航不定期船(外航ばら積み船)の運賃の総合指数のこと。英語表記「Baltic Dry Index」の略で「BDI」とも呼ばれます。世界各国の海運会社やブローカーなどから運賃や用船料を聞き取って算出され、毎営業日のロンドン時間13時(日本時間22時、サマータイム期間中は21時)に公表されます。1985年1月4日を1000として算定しており、国際的な海上運賃の指標となっています。株式市場でも、不定期船を主力とする海運会社との株価連動性が高いうえ、世界経済や商品価格の先行指標とされていることもあり注目されています。
海運セクターの銘柄は、景気動向によって業績や株価が動きやすい「シクリカル銘柄」に分類されます。「シクリカル銘柄」は「景気敏感株」「市況関連株」ともいわれ、循環的な値動きをするのが特徴です。今回は既に調整が始まってしまっていますが、数か月後あるいは数年後に、今回のように海運銘柄に大きな資金が流入する時が必ず来ます。その時に大きな波の出現をいち早く察知して乗れるように、この指数について理解を深めていきましょう。
今、個人投資家が注目する「バルチック海運指数」
MoneyBox.comで指数の検索ランキングを確認してみると、2021年5月20日現在で、SOX指数に次いで第二位となっています。これは、VIX指数やナスダック、ダウといった名だたる指数よりも検索されており、今大きな注目を集めていることを意味します。
「バルチック海運指数」と日本の主要な海運銘柄の連動
日本の海運銘柄の中で最も有名な銘柄と言えば、日本郵船です。日本郵船の株価は、3月1日に安値2,960円を記録した後、5月10日には4,640円をつけ、約2か月で57%の上昇を記録しました。同様に、商船三井も同じ期間において3,260円から4,910円と約50%の上昇、川崎汽船は1,951円から3,425円と約76%の上昇を記録しました。
バルチック海運指数は、この飛躍的な株価上昇を記録した銘柄の株価と、特に2021年3月以降相関性が高いと言われています。以降の章で、銘柄ごとに細かく見ていきましょう。
相関分析
では実際に、バルチック海運指数と上記の日本を代表する海運三銘柄の株価の相関性を確認していきましょう。画面に3つのペインを用意し、上段のペインに株価のローソク足と25日移動平均線、中央のペインにバルチック海運指数との相関係数、下段のペインにストキャスティクスを表示させています。
ある二つの変数の関係性の強さを示します。「-1」から「1」の間で示されます。値がプラスであると二つの変数には「正の相関がある」と表現され、また値が「1」に近いほどその関係性は強いとされます。反対に、値がマイナスであると二つの変数には「負の相関がある」と表現され、また値が「-1」に近いほどその関係性は強いとされます。相関係数が「1」の場合、その二つの変数は完全に同じ動き方をします。
(9101)日本郵船
日本郵船の株価は、2020年9月から現在にかけて、一貫して綺麗な右肩上がりのチャートとなっています。
相関係数に着目してみると、歴史的にはそこまで高い相関性や規則性は無いものの、2021年3月から現在にかけては、概ね高い正の相関があることが分かります。
株価は5月10日に直近高値を記録してから調整に入っており、25日移動平均線にタッチしました。ストキャスティクスを確認してみると、ここから短期的かつ小さな反発が期待できるチャートとなっています。
(9104)商船三井
商船三井の株価も右肩上がりのチャートとなっています。
こちらも4月中旬から5月上旬を除いて、極めて高い正の相関があることが分かります。三銘柄の中で唯一、負の相関の期間がありました。
商船三井の株価も25日移動平均線にタッチしており反発が期待されるものの、ストキャスティクスを見てみると、そこまで大きな反発は示唆されていません。
(9107)川崎汽船
川崎汽船も株価も、他の二銘柄と同様に右肩上がりのチャートとなっており、2021年3月から現在にかけて、高い正の相関があることが分かります。
こちらは25日移動平均線を下抜けていますが、ストキャスティクスを見てみると、バンドを下抜けた後に鋭くクロスしており、他の二銘柄と比較すると、大きな反発が期待できる可能性があります。
今後の見通し
バルチック海運指数の各インジケーターを見てみると、下記の事象が確認できます。
・指数は25日移動平均線を下抜け
・RSIは50付近でモメンタムを失っている
・MACDは下降トレンドを示唆
上記の事象から、バルチック海運指数に関しては、今後も短期的な下降トレンドが継続すると想定されます。
一方で、日経先物やTOPIXは、5月10日週の記録的な暴落から反発傾向にあり、それらに引っ張られる形で上記の三銘柄の株価には上昇の圧力がかかることが想定されます。
また各銘柄を個別に分析してみると、25日移動平均線やストキャスティクスから、短期的かつ小さな反発が示唆されていることが分かりました。仮にテクニカル分析の通りに物事が進んでいった場合、下記のシナリオが導き出されます。
まとめ
・バルチック海運指数は緩やかな下降トレンドが継続
・海運三銘柄の株価は日経平均やTOPIXと連動し、短期的に小さめの反発
・バルチック海運指数と海運三銘柄の相関係数は、短期的に負に近づく