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【セキュリティ事故】メルカリとOmiaiでえげつない情報流出。市場の関心はセキュリティ銘柄へ?【投資考察】

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メルカリとOmiaiで個人情報流出!今後はセキュリティ銘柄に注目?

現在は2021年5月21日(金)です。本記事では、本日ニュースになった大規模な個人情報流出事件とセキュリティ関連銘柄の今後の見通しについて考察します。

※本記事はあくまで筆者の個人的な認識・感想を文字におこしただけのものであり、読者への助言や売買の推奨を意図するものではありません。特定の情報ソースを鵜呑みにして思考停止で金融商品を売買しないでください。投資判断は全て自己責任でお願いします。

マッチングアプリ「Omiai」で171万人分の大規模な個人情報流出

マッチングアプリの中ではおそらく”Pairs(ペアーズ)”についでメジャーな”Omiai(オミアイ)”。実際に使ったことがある人も多いのではないでしょうか。

本アプリを運営する株式会社ネットマーケティングは、2018年1月31日から2021年4月20日の期間に、年齢確認審査書類として提出された約171万人の運転免許証、健康保険証、パスポートなどの画像データが流出した可能性があるとのことです。

マッチングアプリ「Omiai」に不正アクセス 免許証や保険証など171万人分が流出か(Yahoo!Japanニュース)

171万人ってどれくらい?

171万人という数字を見ても、今一つピンと来ない人も多いのではないかと思います。そこで、総務省統計局のホームページで、日本の都道府県別人口を確認してみました。

統計資料を開き、都道府県別の総人口でソートしてみると、ちょうど三重県や熊本県の総人口が約170万人であることが分かりました(令和元年時点)。

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つまり今回の事件では、九州や近畿の1つの都道府県の全住民の数と同規模の個人情報が流出したことになります。このような角度の見方をしてみると、事の重大度の理解が進むと思います。

メルカリでも2万8千人分の個人情報流出

同日、フリマアプリ「メルカリ」でも、2万8千人分の個人情報が流出したというニュースが流れました。

こちらはメルカリのアプリ自体の脆弱性ではなく、フリマアプリの機能改善などのために利用している米国企業提供のツールが不正アクセスを受け、そこから流出したデータの中に顧客情報が含まれていたとのことです。ブログで例えると、Wordpress本体ではなく、Wordpressにインストールされているプラグインがハッキングされて情報が流出した、という感じですね。

メルカリ、個人情報など2万8000件流出 不正アクセスで(日本経済新聞)

Omiaiのケースと比較すると規模こそ小さいです。東京ドームの収容人数が55,000人なので、ちょうど東京ドームの半分です。

しかし、適切な情報セキュリティ対策は今や上場企業としては当たり前のデューケア、デューデリジェンスです。これを怠り顧客の信頼に応えられなかったという点で、事の重大さに差はありません。

株式市場にはどのような影響があるか?

ではこのようなセキュリティ侵害の事件が起こった時に、株式市場にはどのような影響があるでしょうか。

一般的に、サイバー攻撃を受けて情報流出等を「やらかした」企業の株価は、短期的に下がります(被害者ではありますが)。一方で、セキュリティサービスを提供する銘柄には市場の関心が集まります。

どういうことか?事例ベースで細かく見ていきましょう。

ネットマーケティング、メルカリの株価はPTSで下落

本記事を執筆している5月21日18時40分現在、ネットマーケティングとメルカリの株価はPTSでそれぞれ10.81%の下落、2.81%の下落となっています。流出規模の差が下落率に反映されています。
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「やらかした」企業の株価下落は一時的である傾向

しかしながら、このようなセキュリティ事故の報道により株価が大きく下落した時は「買い」のチャンスがあると個人的には考えています。実例を1つ上げます。

2020年11月16日の大引け後、カプコンは標的型攻撃被害で顧客情報など約35万件流出の可能性があるとのIRを出しました。

カプコン、標的型攻撃被害で顧客情報など約35万件流出の可能性(CyberSecurity.com)

このIRを受けてカプコンの株価は、16日の終値2675円から翌日の最安値2,460円と、一時的に約10%の大きな下落を記録しました。しかしながら、その後株価はその日のうちに反転し、17日は2,500で大引けを迎え、その後も株価は上昇トレンドを継続しました。

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このようなセキュリティ事故は、例えば社長のスキャンダルのようなもので、一時的に株価は下落しますが、やがて人々の記憶からは消え去り、株価はもとの水準に復帰する傾向にあります。従って、来週以降に両社の株価が大きく下落するようなら、私は「買い」のチャンスだと捉えます。ただし、企業のファンダメンタルズに問題がないことが前提となります。

セキュリティ関連銘柄個別動向

このような事件が起きると、「やっぱりセキュリティって大事だよね」と人々が再認識し、セキュリティ関連銘柄に市場の関心が向かいます。という訳で、セキュリティサービスを提供する関連銘柄のうち、個人投資家に人気がある(と私が思っている)銘柄を4つピックアップしてみました。順番にチャートを見て、今後の見通しを考察します。

オレンジ色の線は75日移動平均線、紫色の曲線は200日移動平均線です。また画面中段のペインにはMACDを、そして下段のペインにはRSIを表示させています。

2326 デジタルアーツ

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決算で良い成績を出し続け、成長を続けているファンダメンタル良好な企業です。しかし、株価は200日移動平均線を下抜けて、軟調に推移しています。

MACDやRSIを見てみると、株価は底打ちして、短期的から中期的な上昇トレンドに転換し始めているように見えます。直近安値を損切ラインとした打診買いは妥当と考えます。

5月14日にモンドリアン・インベストメント・パートナーズ・リミテッドが同銘柄の保有率を上げた(5.74%→6.98%)という報告があった一方で、同月21日にはレオス・キャピタルワークスが保有率を下げた(6.13%→5.07%)という報告がありました。

デジアーツについて、モンドリアン・インベストメント・パートナーズ・リミテッドは保有割合が増加したと報告 [変更報告書No.1](株探)
https://kabutan.jp/stock/news?code=2326&b=n202105140363
デジアーツについて、レオスは保有割合が減少したと報告 [変更報告書No.4](株探)

このように大口の株主の入れ替えが起きていることからも、この銘柄がトレンドの転換点にあると考えます。

3927 フーバーブレイン

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直近の決算では赤字拡大となっており、苦しい経営が続いています。株価も2020年6月以降下降トレンドとなっており、歴史的に見ても低い水準にあります。

MACDとRSIを見てみると、上昇トレンドへの転換が示唆されています。

2021年3月15日にブロックチェーンエンターテイメントプラットフォームを開発・運営するDigital Entertainment Asset Pte. Ltdとの業務提供を発表し、大きな出来高を伴う株価高騰が起きました。

Digital Entertainment Asset 社との資本業務提携及び重要な人事に関するお知らせ(株探)

ブロックチェーン銘柄として期待が高まりますが、株価は200日移動平均線をブレイクすることができていません。今のところは落ちるナイフ状態であり、手を出して良いか悩ましい銘柄です。

3562 No.1

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2012年の上場以来、通期ベースでプラス成長を続けている優良企業です。その中でも今年は前期比34.2%と成長のスピードを加速させており、今後の更なる成長が期待できます

一方で、信用買い残の増加等を受けて株価はそこまで伸びておらず、割安な水準に留まっている印象です。

MACDを見てみると、上昇トレンドへの反転が期待できます。しかし需給等の観点から、安心して買うにはもう一段の調整があっても良いかな、と感じます。

3692 FFRIセキュリティ

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2018年に過去最高益を記録して以降マイナス成長が続いていましたが、直近では改善の兆しを見せています。セキュリティ関連サービスの需要増加の波に乗り、今後の業績改善に期待が高まる銘柄です。

株価に関しては200日移動平均線の下を推移しており、なかなか上方向のモメンタムが感じられないチャートになっています。

75日移動平均線を上抜けたところではありますが、RSIを見ると200日移動平均線のブレイクは難しそうに見えます。手を出すのは75-200MAのゴールデンクロスを待ってからでもと遅くないと考えます。

兎にも角にも地味なセキュリティ銘柄

ここまでセキュリティ銘柄について考察してきました。

私は普段セキュリティを専門にしている人間です。個人的には、セキュリティセクターは、人気テーマランキングの常連で常に5,6位あたりにランクインして来る割りには、ボラティリティが非常に低く、値幅が狙い辛い印象です。

国際的なサイバー攻撃や、今回のように国内大手企業の大規模な情報流出があった時には、セキュリティ銘柄に大きな関心が集まります。しかしそれも一時的な現象で、すぐに忘れられる……そのようなサイクルを永遠に繰り返している印象です。

この要因として、セキュリティビジネスの「分かりにくさ」と、マーケット全体的なセキュリティリテラシの低さがあると考えています。

「サイバーセキュリティ」と「情報セキュリティ」の違いを問われて、それに答えられる人が、いったい投資家の中にどれだけいるのでしょうか?アプライアンスやソリューションを提供する会社や、監視・運用・保守といった継続的なサービスを提供する会社など、多種多様なビジネス形態があるにも関わらず、「セキュリティ」で一括りにされているのも残念です。

こういった点が抜本的に改善されない限りは、セキュリティセクターは今後もボラティリティの低い株価推移が続くと考えます。

まとめ

・一般的に、個人情報流出等のセキュリティ事故を受けて、企業の株価は下落する
・ファンダメンタルズに問題ない限りは株価の下落は一時的で、買いのチャンスである場合がある。都度ファンダメンタルズを確認すること
・セキュリティセクターはボラティリティの低い状態が続く

ABOUT ME
ウルカの碧い海
表向きはCISSP持ちのセキュリティエンジニアのアラサー兼業トレーダーです。ファンダとテクニカルを組み合わせ、効果的なスクリーニング手法の考察やプライマリトレンドの分析をします。ローソク足や出来高に注目して、モメンタムトレードにおける適切なエントリー・イグジット戦略を探究します。